――――もし神が人間の祈りをそのまま聴き届けていたならば

      人間は全てとっくの昔に亡びていたであろう――――――





   『エピクロス』より







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Undeniable Despair

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序章-act.2














 創造神アーシャの作った世界アーシュムーシュの中心に“塔”はある。











 世界の法と秩序と平和を守る為に存在している“塔”は、塔の長や長老達の執務室などがある“大塔”を中心に、円を描くように周りに5つの塔がある。

 第一の塔を“魔道宮”と呼ぶ。
 魔術師としての才能のある者を集めて教育する機関である。魔術の才を持つ者自体が世界には少ないので、この塔の人員は他の4つの塔に比べ極端に少ない。

 第二の塔を“施療宮”と呼ぶ。
 魔術とは別に、治療の才能を持つものを集めて教育し、施術師を育て上げる機関である。魔術師よりは多いが、それでも他の塔よりも人員は少ない。理由は魔道宮と似たようなものである。

 第三の塔を“法宮”と呼ぶ。
 魔術師、施術師とは別に、特異な力を持つ者が集められている。特異な力とはすなわち、世界の存在する為の秩序(バランス)を保つ為の力である。この力を持つ者――――――法術師は、才能の差こそあれわりと多く存在する。

 第四の塔を“妖術宮”と呼ぶ。
 ここでは妖魔を捕らえ、使役することが出来る力を持つ者(妖術師)を集め教育するのだが、この力はそう珍しいものではなく、この塔の人員は5つの塔の中で2番目に多い。

 第五の塔を“剣宮”と呼ぶ。
 世界中から剣術の才能がある者、または魔剣に選ばれた者を集い教育する機関である。一番人員の多い塔である。

 これらの塔で教育を受ける者を見習いと呼んでいるが、見習いはその教育を三段階に分けられている。
 第一期は基礎知識。
 第二期は基礎技術。
 第三期は応用知識・技術。
 それぞれの段階を合格しなければ次の段階に進めず、第三期を合格できなければ見習いの肩書きはなくならない。つまりは、一人前の術師として認められないのである。
 一人前となった彼らは塔の長の命令で、世界の法と秩序と平和を守る為に世界中を飛び回る。それぞれの力の特徴を生かす為に、仕事によっては別種の術師同士が組むこともあった。





 そういうわけで、剣術師のアシュヴィンと組むことになった魔術師兼施術師兼法術師のシャラは、旅支度を整えた姿で“転移門”――――――アーシュムーシュのあらゆる地に人間を転移させることのできるシステムを持つ門――――――の前で深い溜息をついた。

 同じく、旅支度を整えたアシュヴィンが隣に立っていた。腰には魔剣“紅夜叉”を提げている。

「聞いたか?シャラ」
「何を?」
「女長は隠していたようだが、この件では以前にも数回術師を送っているんだそうだ」
「……そいつらはどーした?」
「全員行方不明、ならびに生死不明」

 再びシャラは溜息をついた。
 なるほど、それで女長は無理矢理にでも自分達を組ませたのか。

 それぞれの塔において最高の実力を持つと噂されている彼らは、他のいかなる者と組んだ時よりも仕事の成功率は高かった。
 というよりも、彼らと組んだ者で五体満足でいられた者がいなかったせいでもある。その圧倒的な力の差により足手まといになったり、彼らのあまりにも強大な力ゆえに巻き添えを食ってしまうのだった。

 力の釣り合いから考えて彼ら以外にまともに組み合える者はおらず、その絶大な力で仕事を成功させるのだ。塔の上層部としては、彼らを組ませるしか仕方がないのである。

 しかし、仕事の成功率が高いというのは彼らにとっては不本意なことであった。

 何しろ、お互い心底嫌い合っているのだから。

 一言で片付ければ「性格が合わない」となるのだが、一方の口の悪さと一方の辛辣な物言いがそれをエスカレートさせているのは確かであろう。仕事なのだから仕方ない、と耐える努力をしたことだとてあるが、いつだって相手を嫌う気持ちには負けてしまった。だからこそ、今回は塔のお偉方に誓約書まで書いてもらったのだ。

 いくら顔を見るのも嫌な相手で側にいるのでさえ苛立つとはいっても、これが最後の仕事なんだからまあ我慢してやるか、と余裕ぶり心の中で相手に対する優越感を味わっているのはどちらも同じであった。

 それにしても……術師を数回送り出してまだ片付かない事件とは……。

「目的は何なんだ……?」

 転移門で例の街へ転移の途中、ポツリとシャラが呟いた。

「?」
「仮にだ、この件が妖魔の仕業だったとして、何を目的として街一つの人間を消した?」
「それは……食物にしたのではないか?」
「骨一つ髪の毛一本残さず?妖魔ってのはそんなお上品じゃねーだろ?」
「……」
「おまけにだ。数回術師が行ってるってことは、事件が起きてからかなり日が過ぎてるってことだろ。それなのにそいつは街の人間を消したまま動こうともしない。何を企んでんだか……」
「その為に私達が行くのだろう。怖いのなら私の背に隠れていたらどうだ?」
「誰が怖いって言った、誰が!?」

 真っ赤になって怒るシャラを見ながら、アシュヴィンは溜息をついた。

(全く……何故、私がこんな子供じみた性格の男と組まねばならんのだ?)

 自分は子守をするために“塔”にいるわけではないのに。
 己の言動がきついものだということは自覚しているが、この、性格が全く子供の男は自分が一言言うと倍以上の悪口を返してくるので、ついつい自分も言い返してしまうのだ。泥沼にはまっていくような気がするのは、気のせいであろうか……。






 転移途中は定まらなかった視界が、突然、光と共に開けた。
 転移が終わったのだ。

 目の前にある街は、どこにでもある平凡な街に見えた――――――人の気配が全くないことを除けば。

「本当に見事なほど人がいねーな。さあーて、何からやりますか」
「街がこうなった原因からだろう。今更何を言っている」
「原因を探るために何からやりゃいいかって言ってんだよ!俺は!!」
「だったらそう言え。紛らわしい」
「お前なー!!」






 瞬間。

 二人はハッとした。






 敵意。
 感じられる。
 痛いほどに突きつけられている。






「お出でなすったか」

 シャラが唇をペロリと舐める。笑みさえ浮かべていた。
 アシュヴィンがすらりと紅夜叉を抜いた。刀身が真紅の輝きを放つ。

 自然と二人は背中合わせになる。そして、敵の出方を待った。

「!?」

 二人は、我が目を疑った。
 視界に入ったのは人間――――――しかも、大勢の人間が二人を取り囲むように出現したからだ。

「アシュヴィン……」
「何だ?」
「こいつら、まさかこの街の人間ってことはねーだろーな?」
「私が知るわけないだろう。こいつらに訊いてみろ!」

 叫びながら、アシュヴィンは襲い掛かってくる人間達の攻撃をかわした。
 侮るわけにはいかない。ただの人間だとしても、誰もが手に包丁や鎌など危ないものばかり持っているのだ。

 シャラは、襲い掛かってくる刃物を避けながら、大元を突き止めるために感覚の全てを外に向けた。
 彼らが操られているのは一目瞭然だった。アシュヴィンがそんな馬鹿なことをきいてきたらぶん殴ってやろうと思っていたが、さすがに術師としてレベルの高い彼は承知していたようだ。

「シャラ、こいつらを気絶させろ!キリがない!」
「お前なー!塔の掟を忘れてんのか!?魔術師は人間に対して魔術で攻撃してはならないことになってんだぞ!」
「この役立たずが!!」

 あまりな言い草だが、アシュヴィンの非難は正しくて唇を噛んだ。こんな時に自分は非力だ。
 せめて、人間を操っている妖魔を探し出し倒さなければ……。

「……?」

 おかしい。
 妖気が全く感じられない。
 これは妖魔の仕業ではない。つまり――――――人間の仕業、ということか?

 女長が妖魔の可能性がある、と言ったのですっかりそれを信じてしまっていた。別に自分の失敗を他人のせいにするつもりはないが、それでも少し恨んでしまう。

 妖魔以外で人を操ることの出来るのは――――――魔術師。
 魔術師相手とはいえ人間。シャラには攻撃することが出来なかった。これでは本当に役立たずになってしまう。

「冗談じゃねーぞ!!」

 シャラは意識を集中した。その結果動きが鈍くなるが、この際少しくらいの傷は無視することにした。
 大元を倒すことが出来ないのなら街の人間にかけられている術を解くしかない。それは、相手の持続している力を中和・分解するのだから、相手の何倍もの力が必要になる。ぶっ倒れるのを覚悟でやるしかない。

 相手の波動を読み取るべく、意識を集中させた。
 シャラの全ての感覚がそちらを向く。

 力の波動が……見えた。もう少しで読み取れる。もう少し……。

「シャラ!後ろ!!」

 アシュヴィンの声にハッと我に返って振り返った時、目の前にいたのは異形の形をした者であった。
 防御壁(シールド)を張ったが一瞬遅かったらしく、そいつの鋭い鉤爪が頬をかすった。
 かすったにしては結構深く切れたようで、鮮血がとめどなくあふれ出てくる。

「やってくれるじゃねーか」

 シャラにとっては不覚だったというしかない。意識を敵の力に向けて集中していたので、妖気を感じ取ることが出来なかった。

 しかし、シャラは、妖魔が現れたからといってそいつがこの件の大元だとは思わなかった。
 この妖魔はおそらく使い魔(人間に囚われて使役される妖魔)だ。つまり、妖術師がどこかにいる。

「魔術師と妖術師の資格でも持ってんのかね。全く、厄介だな」
「何のことだ?」
「こいつは人間の仕業だ。妖魔じゃない」
「つまり、お前はまるっきりの役立たずというわけか。本当に足手まといだな」
「うるさい!!」

 全く、そうならないように全力を尽くしているのに。

「アシュヴィン、妖魔の方は任せたぞ」
「自分でやればよかろう」
「てめぇの魔剣は伊達か!?ぐだぐだ言ってねーでさっさとやれ!!」

 チッと舌打ちをしてアシュヴィンは『紅夜叉』を構えた。

 魔剣――――――その名の通り、普通の剣ではない。この世で唯一妖魔を傷つけることができる武器だ。

 その性質はどちらかというと妖魔に近い。毒を持って毒を制す、というわけである。
 厄介なことに、魔剣は自らの刀身を委ねる主を選ぶ。それ以外の者には決して抜かせないし持たせない。
 どんなに剣の腕がたっても魔剣に選ばれなければ妖魔退治は出来ないし、剣を持ったことのない素人でも、選ばれてしまたっら有無を言わさず塔に連れて行かれ、剣術師となる為の訓練を受けさせられる。
 おそらくは、アシュヴィンもそれらの経過を経てきたのであろう。

 刀身からほとばしる真紅のオーラが妖魔を威嚇し、妖魔の動きが鈍くなった。
 しかし、それでも妖魔は鼻で笑った。

「ふんっ、貴様などに術が解けるものか!その前に力を使い果たすのがオチよ!」

 どうやら人語を解し、話すことが出来るらしい。そう低級なものではないわけだ。

「うっせーな!バケモノのくせに人間の言葉なんか話すんじゃねーよ!!やってみなきゃわかんねーだろーが!!」

 ……本当に、顔に似合わず口が悪い男である。

 ふわりとシャラの髪が波打つ。
 爆発の、予感。






「なめんじゃねーっ!!」






 力の分解。術の解除。

 カッと閃光が走る。






 同時に、紅夜叉が妖魔に向かって振り下ろされた。

 消える妖魔の命。






 数瞬の後、静寂が戻った。
 敵意は消えて、一人、また一人と街の人間達が地面に倒れていった。呪縛が解けたのだ。

 妖魔の命を屠りさらに真紅に輝く紅夜叉を鞘におさめると、アシュヴィンは背後を振り返った。
 振り向いた視線の先にあるはずのシャラの身体は、街の人達と同じく、地面の上に倒れ伏していた。

 驚いた表情さえ見せず無言で近づいたアシュヴィンは、足の爪先でごろんとシャラの身体を仰向けた。

「……足蹴にすんなよ、バカヤ……ロー……」

 途切れ途切れでか細い声が形のよい唇から洩れた。その顔は血の気が引いて真っ青だった。

「何だ、生きていたのか」
「……勝手に……殺すんじゃねー……」

 荒い息をしている。体力を使い果たしたらしく、起き上がることは無理らしい。

「くたばり損ないが何をぬかす。いっそのこと、死んでくれていれば面倒がなくてよかったんだがな」
「面倒になって悪うござんしたね。……このキレーな顔が拝めて涙が出るほど嬉しいだろ?」

 残った力をかき集めて、シャラはせいぜい嫌みったらしく笑ってやった。
 その台詞に、アシュヴィンがフッと思い出したように首を巡らす。

「顔といえば、お前、その顔の傷は綺麗に消しておけよ。施術師だろ」
「おーや、心配してくれるなんて、どーゆー風の吹き回しだ?」
「我が身を心配しているだけだ。お前の顔に傷を残すと女長がうるさい」
「?」
「女長がお前の顔を気に入ってることを知らんのか?」
「……………………初耳だ……」

 女盛りを過ぎた女長が懐にシャラの肖像画を隠し持っているところなど、想像したくもなかった。
 別の意味で青ざめたシャラの身体を、再びアシュヴィンが足で小突いた。

「いつまで寝転がっている。早く起きろ」
「……てめーには思いやりってもんがねーのか!?」
「声をかけてやるだけありがたく思え」

 冷たい言葉だが、この二人の関係を考えてみれば置いていかれても不思議はなかったので、確かにそれは正論であった。

 まだ力の入らない身体を無理矢理起こしながら、シャラは心の中で、「こいつはいつか絶対自分が殺してやる!」と固く決心していた。

 自分もさほど他人に関心を抱かないのだが、彼の場合はその感情さえもないんじゃないかと常々思っている。
 人を苛立たせては、その反応をうっとうしがる。本当に、嫌な男だ。
 皮肉な口調は元々のものらしいが、どうやら自分に対してはそれがエスカレートしているようなのだ。奴が自分の口の悪さに腹を立ててやっていることらしいが、それはお互い様だ。自分は奴の口調が大嫌いなのだから。
 早くこの仕事を片付けて塔に戻ろう。そうすれば、二度とアシュヴィンとh顔をあわせることもなくなるのだ。せいせいする。

「塔……か……」

 魔術師と妖術師の資格を持つ人間で、この街に関わりがありそうな人物を塔に問い合わせてリストアップしてもらう必要があるな。
 シャラは思考をすぐに仕事のことに切り替えた。そこは根っからの術師というべきか。

「おかしいとは思わんか、シャラ」

 倒れている街の人々を見下ろしながらアシュヴィンが話しかけてきた。

「襲い掛かってきたタイミングがよすぎる。まるで私達が来るのがわかっていて待ち伏せしたみたいだ」

 シャラの思考が仕事のことに切り替わっているのを承知していたようだ。シャラの方も、何故わかったのか、と問うことはしない。個人的な感情はどうであれ、お互い術者としての実力を疑ったことは一度もなかった。

「情報が洩れてたって言うのか?」
「それはあり得ん。塔の結束は絶対だ」
「じゃあ……最初から術者を誘い出すのが目的だってことか……」

 その為に街中の人間を消したというのか。大掛かりな罠を仕掛けてくれる。
 しかし、何故?

「俺は塔に連絡を取ってみるけど、お前はどうする?」
「どうする、とは?」
「だから、今から何やんだよ?」
「原因を探るに決まっているだろう。何度同じことを尋ねる?」
「もういい!!」

 何をこいつはこんなに怒っているのだろう、とアシュヴィンは首を傾げるが、シャラはぷんぷんとしながらどこかへ行ってしまった。

 本当に、子供のような性格だ、と思う。
 三つの術師の資格を併せ持ち、塔では伝説になるだろうと噂される凄まじい力が、どうしてあんな子供に宿っているのかが不思議だった。

 溜息をついて辺りを見回した。街人達はまだ気づかない。
 これだけの人数を介抱するというのも大変なことなので、このまま放っておくことにした。その内、気づくだろう。

 そう思っている矢先に、一人だけ、むくりと起き上がった。きょろきょろと辺りを見回し首を傾げている。操られていた間の記憶がないのだろう。

「怪我は?」

 アシュヴィンはその男の側に屈み込んでお義理的にそう尋ねた。いきなり本題に入るのはやはり礼を失するだろう。

「だ、大丈夫、です、けど……あの?あなたは?」
「塔の者だ。聞きたいことがある」
「と……塔の!?わ、私は何も知りません!やってません!そんな、塔に目をつけられることなんて何にも……!!」
「別にとって食うわけではないから落ち着け」

 パニック状態になってい待った男を宥めすかせる。塔、と聞くと一般人は誰でもこうなる。普通の人間には持ち得ない力を持つ塔の住人。自分達は、一般人にとっては畏怖の対象なのだ。

「聞きたいことがあるだけだ。一体、どこから記憶が無い?」
「へ?」
「最後の記憶の様子が知りたい。思い出せ」
「お、思い出せって言われても……」

 気が付いたらいきなり地面に寝転がっていてわけが分からないのに、突然最後の記憶を教えろといわれても頭が混乱するだけだろう。
 そのくらいのことはアシュヴィンにだってわかりきっていたが、相手の混乱が収まるまで待ってやる理由も何もなかったので、単刀直入に訊いたのだ。
 じっと、答えを待って男の顔を覗き込む。

 視線が、ぶつかり合う。






 そして、そのまま数秒。






「無駄だ」

 アシュヴィンは、紅夜叉の柄を握りながら言った。

「私に術をかけることは出来ん」

 ハッと男が顔色を変えて飛び退った。先ほどまでのおろおろとしていた表情ではない。

「俺の術にかからないとは……貴様、人間ではないな?」

 それには答えず、アシュヴィンはすらりと剣を抜いた。

「この街の人間を操っていたのは貴様か。探す手間が省けたな」
「どうする気だ?」
「斬る、と言いたいところだが、私は理由を探らねばならん」
「出来るものならやってみろ!!」

 アシュヴィンは男に向かって紅夜叉を振り下ろした。

 男は避ける動きは見せなかった。それどころか、左手を突き出し手の平で振り下ろされた剣を受け止めた。
 正確に言うなら、紅夜叉の刃は男の手の平に届いてはいなかった。何か見えない力が、刃を押し止めていたのだ。

 しかし、アシュヴィンは顔色を変えることなく、

「やはり、貴様は術師か」
「そうだ。やっと力のある術師が来てくれた。シャラシャーインの噂は聞いている」

 アシュヴィンは眉をひそめた。
 彼の真の目的はいまだわからないが、シャラを狙っているのは確かなようだ。

「貴様に用はないが、折角だ。シャラシャーインに対する持ち駒になってもらおうか」
「私に術はきかん、といったはずだが?」
「確かに貴様にはきかんかも知れんな。だが、これならどうだ?」

 紅夜叉を受け止めている左手から力が流れ出すのがわかった。
 しかし、アシュヴィンは不可解というように眉を寄せた。男の力が、自分には向かってこなかったからだ。






 力の流出する先は――――――魔剣『紅夜叉』。






 男の意図を悟って、初めてアシュヴィンが顔色を変えた。

「しまっ……!!」
「もう遅い!魔剣を支配すれば、魔剣の主たる貴様も支配できる!俺に従え!!」
















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